映画『クォ・ヴァディス』のユーニス

ポーランド人の作家シェンキェヴィチの
歴史長編小説『クォ・ヴァディス』は
1951年に映画化された

ハリウッド映画なので
登場人物の名は英語読みされてて
ペトロニウスの愛人となる奴隷女の名は
Euniceでユーニスだった

偕成社世界少女文学全集の『クォ・バディス』や
岩波文庫『クオ・ワディス』での
エウニケの呼び名の方が自分的にはしっくりくるが
以下は映画についてなので
ユーニスで統一する

このユーニスを演じてたのは
Marina Bertiなる女優で
画像のように圧倒的な美貌の正統派の美人

地中海を越えて
ローマに連行されて(と、自ら語ってるが)
折りしもペトロニウスに仕えるコトになったのだが
そんな境涯の不遇は全く気にかけておらず
むしろ愛しい主人の傍に仕えて
幸せを噛み締めてるような女である

なんせ主人のペトロニウスにメロメロでも
奴隷が主人に告白をするなんて
身分が違い過ぎて到底できなかったので
ユーニスにとって唯一の不幸は
想いを秘めねばならナイコトだった!

ところがある日
ペトロニウスの甥の元にやられそうになり
それを激しく拒絶するるる~

どんな罰を受けても構いません、どうか、おそばに!!

ユーニスを貰い受けるはずだった男こそが
主人公のヴィシニウスなのだが
元より彼には別に貰い受けたい女がいたのもあり
ペトロニウスはユーニスを手放すのを諦め
主人に逆らったコトに対して
ユーニスにムチ打ち5回の罰を与えるも・・・

ペトロニウス「ムチ打ち5回だ」
ユーニス「ここにいても?」
ペトロニウス「行い次第だ」
ユーニス「ありがとうございます」

どんな罰を受けても
愛するペトロニウスの元を離れたくナイp(-_-+)q

そうしてユーニスは
したたかムチ打たれた後で
秘かに主人の胸像にキスをしながら
さも愛しそうにささやく

愛しいご主人様、お慕いしてます、お伝えできたらいいのに・・・

美女がうっとりとした表情でつく溜息の
なんたる甘やかさ・・・ホゥ(*-∀-)
そんなユーニスを作品にしたミュシャは天才だ!

そしてまたある日
ついに告白するチャンスが訪れた

ユーニス「老婆の予言の詩があるんです」
ペトロニウス「どんな?」
ユーニス「すみれ色のローマの海に/ヴィーナスが現れて/恋人たちを結び付ける/彼女の腕で永遠に」

ペトロニウスはこの時まで
ユーニスの気持ちには全く気付かず
使用人の誰彼と相手の名を挙げるのだが
ユーニスは総てにうなだれながら首を振り続け
最後に主人をまっすぐに見据えてこう言う

He’s my lord.

一瞬硬直したペトロニウスだったが
ユーニスほどの美女に言い寄られては
拒絶できるワケもなく

すみれ色の海へ私が誘ったらどうなる?

なんて返しができるトコロが
いかにも洒落モノらしいw

そんなペトロニウスに対して
逆にユーニスは全く捻りがなくて
えくぼまで作って顔を輝かせながら
小犬のように足下にすがり

嬉しくって気絶します!

しかしどうするかを問いかけただけで
まだ誘われたワケではナイのだ
と気付いた瞬間にしゅんとしてしまう

あとはお誘いだけ・・・

てか、この一言こそが誘いでなくて何なのだ?!
そして男の方からがっつり誘わなくてどうするのだ!!

ペトロニウス「それではアンティオキアへ」
ユーニス「ポカ~ン(゚ o ゚*)」
ペトロニウス「気絶しないのかね?」
ユーニス「支度をします、今すぐに(^▽^*)」

愛するコトしかできナイ女が
愛されるコトで幸せの絶頂へ・・・
だが、幸せな日々は続かなかった。・゚・(ノД`)・゚・。

ペトロニウスには死を予見してた

ユーニスが奏でる竪琴にも死の影を感じ
遂にネロに自殺を命令され
友人を呼んで最期の晩餐の場で
自殺を宣言し決行

ユーニスは何の迷いもなく一緒に果てた
寄り添って眠るように死んでる2人が
なぜか幸せそうに見えた

こんな美しい女に命懸けで愛される男は
そりゃあ幸せだったろう

『クオ・ワディス』のペトロニウス

完訳を最初から読んでたら
恐らく平静に読み進めるだろうが
読み慣れた児童版には
「隠されてた秘め事」があって
それが露見すると思いつつ読むと
無駄にどぎまぎしてしまう

幼少の砌
偕成社の世界少女文学全集を愛読してたが
その中に『クォ・バディス』があった

ポーランド人作家シェンキェヴィチが
ネロの時代のローマを描いた歴史長編小説で
ハリウッド映画『クォ・ヴァディス』の
原作となった

児童版は何度も読んでて
映画も何度も観てて
その差異にずっと違和感を感じてたのに
完訳版の『クオ・ワディス』を
岩波文庫の上中下巻で読んだのは
恥ずかしながら四十路を過ぎてからだった

児童版として改訳したモノだと
削除(省略)されてる部分は
通常は暴力とかセックスとかの描写で
子供の教育上よくナイ
=子供がそれを真似たら困るからだ

初めて読む本へのときめきとは別に
児童版で既知の物語の完訳版を読む時には
何かしらの【禁忌】を破るはずなので
妙な興奮が伴うのはそのためだ

まるでパンドラやイヴになった気分だw

しかし完訳版『クオ・ワディス』を読んで
児童版と映画とで同じ箇所が
意図的に省かれてたのに気付き
【禁忌】を破る以上に衝撃的だった

例えば
この物語はネロの頃のローマ帝国だが
主要都市やそこに実在した人物についての噂話など
譬え話や際どい洒落に悉く引用されてて
無垢な子供には当然ながら意味不明だろうが
大人でも教養や経験値がなければ
まるで面白味を感じられまい

そんな危惧のために省かれた描写であり
物語の筋には直接関係ナイワリに
註釈が冗長になり過ぎるきらいがあるせいか
そのほとんどがスルーだったのだ・・・バタリ ゙〓■●゙

It’s Greek to me !
(それって、自分にはギリシア語だわ!)

てのは、ちんぷんかんぷんって意味だヽ(゚∀。)ノ

英語を母国語とする民族に
そんな表現があるくらいなので
無教養な一般大衆にとって
古代ギリシア(ローマ)の古典は
ちんぷんかんぷんなのだw

で、マイケル・マクローンの
古代ギリシア・ローマの古典由来の
慣用句の解釈本の原題が
まさに『It’s Greek To Me !』なのだ!

ともあれ
まだ無分別な子供以上に
インテリジェンスと無縁な大人には
ちんぷんかんぷんの応酬が続く映画なんか
総スカンを食らうのは明らかで
そりゃあ省くよな。(´д`;)ギャボ

自分からしたら
その無教養さからゴーインに展開するような
所謂アメリカン・ジョークの方が
理解不可能だがな。(゚д゚lll)ギャボ

両者は笑いのツボが違うのだよ
疑似体験も含めて
当て嵌まるエピソードが脳裏に浮かぶと
思い出して重ね合わせて
「なるほど」とほくそえんでしまうのだが
無垢な子供や無教養な大人は
奇を衒ってるだけでおかしくて笑うし
むしろ意味があっても
その意味がわからなければ笑えず

そう考えると
真に享楽的な人間とは
勤勉で教養があり
人生経験豊富で
とりわけ失敗談に尽きナイのが
望ましいかもしれナイなw

自分にとっては本でも映画でも
【It’s Greek to me !】な部分こそが
わかれば楽しいし
わからなくても謎を解く愉しみがある

『クオ・ワディス』においては
ペトロニウスが登場してる場面では
これが凄まじいほどで
さすが「趣味の審判者(アルビテル・エレガンティアルム)」と
うっとり失笑するのだwww

ペトロニウスは身分的には貴族で
地位は執政官ではあったが
ネロに重用されてたのは
政治的な立場においてではなく
あくまでもペトロニウスの芸術的趣味が
世間から持て囃されてたのを気に入られたのだ

ネロとペトロニウスの趣味趣向が
具体的にどうだったのか
その最も知りたかったコトが仔細に綴られてて
著者のシェンキェヴィチも
相当なヲタだと改めて感服した・・・ホゥ(*-∀-)

特にペトロニウスの容貌についても
まだ1段落目の終わりくらいで
決定的に胸熱な表現があり・・・

《神のごとき》アレクサンドロスがあなたに似ていたとすれば――ヘレネがああなったのも不思議はありませんね

アレクサンドロスキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !

この場合のアレクサンドロスとは
トロイの王子パリスで
葡萄の房の巻き毛を持つ美麗な王子だ

しかもこれはペトロニウスの姉の息子
ウィニキウスの台詞なんである

実はウィニキウスこそが
この物語の主役の美青年なのに
叔父のペトロニウスの美貌について
お世辞抜きでそう言ってるワケで
参考画像はアルフォンス・ミュシャ作の
『Quo Vadis(クォ・ヴァディス)』

美しい巻き毛もアレクサンドロス・パリスらしい
ペトロニウスの彫像(左)と実物(右)

これはご主人様ペトロニウスを慕う奴隷のエウニケが
こっそりと彫像にくちづけをしに来てる図で
この時エウニケは主人に逆らったので
鞭打ちされた後なんである

それはペトロニウスが
甥のウィニキウスを元気付けるために
美女の奴隷を賜ろうとしたのを
当のエウニケが断固として拒否したからだが
想いが叶わずとも罰に鞭打たれようとも
ペトロニウスの傍を離れたくなかったからだ

そうしてエウニケは最期まで・・・
ペトロニウスがネロの命で自殺をする時も
一緒に自死する

その2人の身分を超えたロマンスの
始まりの場面をなんと美しく切り取ったコトかと
ミュシャの感性に絶対的な信奉を齎したのが
この作品である

実物を観れた時は
2時間近く並んだ甲斐があったと
この1点だけでも狂喜乱舞モノだった!

話が逸れたが
《神のごとき》とは
もちろんその美貌が人並み外れてるからだが
「趣味の審判者」と呼ばれる程に
美意識の高い人間が
自らもその美意識に適ってるのだp(-_-+)q

そんな男なればこそ
アレクサンドロス・パリスは
世界一の美女ヘレネが一目惚れした末に
9歳の娘を置いて駆け落ちするに至り
それが元でトロイ戦争が始まったとな!!

児童版や映画ではいかんせん
ここの詰めが甘かったので
自分はペトロニウスを侮ってたが
今や完璧な敗北感を味わってるるる~
但しとても気分が゚+.(・∀・)゚+.゚イイ負けだが♪

児童版の人物紹介の
ペトロニウスの項を読み返してみると・・・

ローマでもっともすぐれた貴族。その賢さのために皇帝ネロの信頼が厚い。ネロの詩の先生であり、また辛辣な批評家でもある。(後略)

訳者である野田開作の苦心を考えると
申し訳ナイが笑ってしまう!

「すぐれた貴族」なる表現自体が不可思議だが
「賢さのために~信頼が厚い」も
「ネロの詩の先生」も
ペトロニウスの奥深い人物像を
人生経験の浅い子供に対して
わかるように解説するコト自体が
不可能だろうてヽ(゚∀。)ノ