ビブロス(イシスとオシリス)

赤地に黒でセンシティヴで流麗なライン
ビアズリーかハリー・クラークのようなイラスト
中心には黒地で金枠に金の文字

七つの愛の物語―「イシスとオシリス」から「トリスタンとイゾルデ」まで

そんな表紙の美しい装丁の本『七つの愛の物語』には
ヨーロッパやオリエントの原初の愛の物語が
タイトル通りに7つ収録されてる

エジプト神話★イシスとオシリス
シュメール(メソポタミア)神話★イナンナとドゥムジ
インド神話★シヴァとサティー
ヘブライ人(イスラエル人、ユダヤ人)の伝承★雅歌
ギリシア神話・ラテン文学★プシュケーとエロース
アラビア人(ペルシア人、セム族)の伝承★ライラーとマジュヌーン
ロマンス(中世ヨーロッパの騎士物語)★トリスタンとイゾルデ

これらの中で「トリスタンとイゾルデ」は何冊も持ってるほどのヲタで
それでも飽き足らずに「トリスタンとイゾルデ」をググってて
この『七つの愛の物語』に出会った(のは2004年)

ギリシア神話もラテン文学もヲタなので
「プシュケーとエロース(アモルとプシュケ)」も
アプレイウスの『黄金の驢馬』の挿話としてよく知った話だった

その『黄金の驢馬』の最後に登場するのがイシスとオシリスで
エジプト神話由来の夫婦(兄妹)神だとは知ってたが
なんせプルタルコスの論文『イシスとオシリスについて』でしか読んでなくて
この神話の内容はどうも朧気だったのだ

では、これから神話を物語りますが、できるだけ手短に、まったく無用の余計な部分は省略することにしましょう。

そう前置きしつつ『イシスとオシリスについて』でも一応あらすじを紹介してはいるが
むしろ逆に無駄にプルタルコスお得意の薀蓄を織り交ぜてくるので
話が横道に逸れまくるわ、1つの単語を深く掘り下げ過ぎるわ
輪郭がさっぱり掴めんてヽ(゚∀。)ノ

しかもそうしてストーリーもはっきりわからナイワリには
違和感を感じて引っかかってしまう箇所があって
例えば、イシスの父親がヘルメスだとか。(´д`;)ギャボ
セト=テュポンとか、オシリス=ディオニュソスとか。(゚д゚lll)ギャボ
まあこういった系譜の異説や異民族間でのすり替えは神話ではよくあるコトだがw

但し、プルタルコスは古代ローマの神官(※)だったが
古代ギリシアの哲学者のような自然哲学に対する考察力があり
神と称される信奉の根源的存在を一種の象徴と捉えてる部分があり
各民族の信仰の由来が近似だった神同士を結びつけてるので説得力はあるるる~
アポロンを祀るデルポイ神殿に仕えてた

それでもどうにも納得が行かナイのは
オシリスの棺が流れ着いたのがビブロスだったってコトで
ウェルギリウスの『アエネーイス』にしてもだが
古代ローマ人が信じてるフェニキア人の各都市の成立年代(※)ってのが
史実より明らかに古過ぎるのだよな(-_-;)
ヘロドトスの『歴史』がフェニキア人についての記述から始まってるのが誤解の元かと推測

エジプト創世神話の時代にビブロスが既に都市化してて
トロイ戦争の頃にはカルタゴが建国されてたなんて・・・バタリ ゙〓■●゙

いや、神話の中で1,000年のズレがあるのは気にならナイが
人類史としたら100年もズレてたら嘘になってしまう
神は1,000年生きるだろうが人は100年も歳をとらずにはいられナイのだ

だからフェニキア人の史実を誤って神話に取り入れたために
神話としても不確実性を露呈してしまってるのがなんとも惜しい気がするのだ

ちなみにゲルハルト・ヘルムの『フェニキア人』によれば
確かにビブロスの遺跡は他のレバノン海岸沿いの都市と比して最も古く
最古で紀元前4,500年頃の村落跡が発見されてるが
イシスが訪ねたような王宮となると村落などではなく
もっと都市化された紀元前2,900年頃より以降と想定されるので
エジプト第1王朝(紀元前3,100年頃)よりも新しい

そもそも同じく『フェニキア人』によればビブロスの呼称は

ブブロスあるいはビュブロスは単に、強大なフェニキアの共同体の名というだけでなく、また、パピルス、すなわち紙の原料を表わすギリシア語でもあったのだ。のちに、それからビブリオン、すなわち本という表現ができ、最後にルナンが集中的に研究していた聖書(ビブル)になった。

パピルスあってこその名称でそう呼んだのも古代ギリシア人てコトは
少なくとも紀元前2,000年以降と更に新しく想定せねばなるまいて(゚*゚;)

対するイシスとオシリスの年代の古さだが
まず混沌からアトゥム=ラーが生じて
シュー(空気もしくは大気)とテフヌト(蒸気もしくは湿気)を産み
シューとテフヌトがゲブ(大地)とヌト(天空)を
ゲブとヌトがイシスとオシリスを産んだとされてるのだから
実はエジプト第1王朝とかのレベルではナイのだ

それはそれとしてイシスとオシリスが1,000年以上とか生きてて
それより前の世代は億単位の年数を生きてるとすると
科学史とはある意味で辻褄が合ってるのだが?!

ゲブとヌトが生まれたのはその名の通りに大地と天空ができた時で
シューとテフヌトが生まれたのは地球ができた45億年前で
アトゥム=ラーが生まれたのはビッグ・バンとか?!

古代エジプト人が地球外生物かと疑われる所以はこの創世神話かΣ(゚д゚lll)ガーン

フロルッサス・デ・ゼッサントの影響

四半世紀に渡って何度も同じ本の同じ部分を読んでる

ユイスマンスの『さかしま』がそれだが
中でも第3章が最多で次いで第5章、第7章、第12章、第14章辺りだ

A rebours

『さかしま』は「奇異」な小説で
主人公のデ・ゼッサントの趣味や思想を並べ立ててるだけで
ストーリーはその中で挿話として展開するのみだ

なので一応はユイスマンスの小説なのだが
読んでる感覚からするとまるでデ・ゼッサントのエセー(エッセイ)だ

デ・ゼッサントは19世紀フランスの貴族の男なので
その趣味や思想は健全(ノーマル)な現代日本人には全く縁のナイモノばかりで
自分も未だに半分もわかってナイ気が・・・ヾ(・_・;)ぉぃぉぃ

読み始めたのは高校生の頃で
一般よりはよほど不健全(アブノーマル)な文学を好んで読んでたし
芸術も音楽もデカダンの香りがするモノを愛好してるワリに
バイオテクノロジーとゆー生化学の最先端を勉強してて
自分も世界を理解してキタ ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !と奢り高ぶってたので
デ・ゼッサントが次々と提示してくる固有名詞が
ほとんど初見であるコトに衝撃を受けた!!

澁澤の注釈がなければ、いや、注釈があっても
1/10もデ・ゼッサントの趣味や思想を理解できなかった
てか、全然知らナイモノの羅列でしかなかった。(゚д゚lll)ギャボ

そもそも固有名詞を除いたトコロで
漢和辞典がなければ数ページも読み進めナイほど
新鮮な読み方の漢字が怒濤のように繰り出すのであるるる~

澁澤龍彦訳しか読んだコトがナイのだが
他の澁澤訳のデカダン文学に慣れ親しんでたはずの自分が
『さかしま』だけは全く置き去りにされたのだった
しかし漢和辞典と注釈に頼りながらもしぶとく読み進んだのは
デ・ゼッサントの趣味と思想に共鳴する部分を片鱗ながらも見出してたからで
生涯の友となる予感がしてたのだ

それからもう四半世紀が過ぎようとしてるが
デ・ゼッサントの趣味や思想を未だ総て理解しておらず
また理解しても納得はできずに反駁さえするような見解も生じた
それでもデ・ゼッサントが魅力的なのは変わらナイ

初めて読んだ時はとにかくいちいち興奮した

第1章でボオドレエル(ボードレール)の語を見つけて
まずは文学の趣味の接点があるコトに嬉しくなった(*^^*)

まあデカダン趣味は読む前から予想してて読み始めたのだが
第2章でパストゥール(パスツール)の名(※)を目にして
まさかデカダン趣味の貴族にこの近代細菌学の開祖を語られるとは
予想してなかっただけに殊更嬉しくなった(^▽^*)
応用微生物を勉強してた自分にとってはパスツールはとても近しい存在だった

第3章では古代ローマのラテン文学が網羅されるのだが
それら殆ど総てを批判するデ・ゼッサントの気に入ってるのが
ペトロニウスの『サテュリコン』とアプレイウスの『黄金の驢馬』で
ついでに言えばヘリオガバルスに好意的なのだ(゚ ゚;)

しかもウェルギリウスやオウィディウスに始まって
セネカに大プリニウスまで続けざまに延々と非難囂々の挙句に
いきなり上記3人が絶賛されてるのであるヽ(゚∀。)ノ

なのでここまでですっかり決心してしまったのだ

きっと一生かかって追い求め続ける、と・・・ホゥ(*-∀-)

天使について

天使像はギリシア神話の勝利の女神であるニケが原型である
ニケはローマで言うトコロのヴィクトリアで英語のVictoryってのはこれが由来だ
またNikeはスポーツ用品メーカーが使ってるるる~

しかしニケはギリシア・ローマ神話にほとんど登場してなくて
最も系譜に詳述があるアポロドーロスの『ギリシア神話』にも誕生の記載しかナイ
ホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』にも出てこナイから
もしかすると古来からの神ではなかったか地域限定だったのか?

天使像の原型となったニケの彫像はルーブル所蔵の『サモトラケのニケ』で
BC190年頃ロードス人が対シリア戦勝記念にサモトラケ島に建てたモノ
でもフランスまで観に行かなくても日本でも見れるるる~
ルーブル彫刻美術館てのがあるのだ
しかもちょうどTOPページに『サモトラケのニケ』が出てる
LINK:ルーブル彫刻美術館

『サモトラケのニケ』以外では片足の膝を上げてるニケの像が多数あり
これは全力疾走の表現なので
勝敗が決定した際に勝利の宣告を授かって
陣営から陣営と走って廻ったメッセンジャーの役割をしてた
俊足の女性・・・もしくは女性に見紛う容姿の美少年が神格化したのが起源
なんて妄想してるのだが実際はどうなのか不明

この正統派の大人の容姿の天使以外にも
日本の某食品メーカーが登録商標にしてるような乳幼児の姿の天使もいる

【プット】と呼ばれるこのタイプはルーベンスの作品に溢れかえってるが
ルネッサンス期に描かれるようになった比較的新しいモノで
ヴィクトリア朝のイギリスにおいてもブームだったらしく
「Victorian Angels」でググったらその手の画像がどっさりあった

原型としてはギリシア神話のエロス(ローマのアモルもしくはクピド)で
英語圏ではCupid(キューピッド)となるw

アモルとプシュケ (アモルとプシュケ叢書)
アモールとプシケー―女性の自己実現

ギリシア及びローマ神話のエロスの出自には異説が多々あって
これがヘレニズム期にアプロディテの息子とゆーコトで落ち着いた
アプロディテと言えばローマのヴィーナスで
愛と美の女神であるのは誰もが知るトコロだが
それで息子が【アモル:愛】だったり【クピド:欲望】だったりするワケだ

エロスが幼児として描かれるようになったのは
たぶんアプロディテとエロスの親子像が
美女と美少年ではどうにも親子らしくまとまらナイからではナイかと。(´д`;)ギャボ
だからってエロスを全くの赤ん坊にしてしまうとすると
今度はアプロディテが聖母ぽくなってしまう。(゚д゚lll)ギャボ
それで幼児がちょ~ど゚+.(・∀・)゚+.゚イイってコトになったのではなかろうか?

ニケは美術作品も少ナイので天使と見紛うコトはナイだろうが
エロスは数多く描かれてるから素人には見分けがつかナイだろう
周囲の人物がアプロディテやプシュケなどのあからさまな美女か美少女であるか
またはアトリビュートが弓矢であればエロスだ

ところで天使の背にあるのは翼であって羽でも羽根でもナイ

翼は飛行のための器官でその構成単位は羽
羽は翼の構成単位で生えてる状態のモノ
羽根は羽が抜け落ちたモノ

天使や鳥の翼を羽や羽根と誤用しがちだけどあれは翼が正しい
(実際に手元の本もほとんど誤用してるが)

昆虫には通常2枚づつ左右2対で計4枚の羽が生えてて
これらが翼の役割をするが翼ではなく羽(翅とゆー字も使うけど基本的には羽)である
昆虫に類似の羽を持つ妖精やハエそっくりの悪魔ベルゼブブも羽だね

ん(・_・?)
ベルゼブブ以外の悪魔や怪物によくあるコウモリ様のモノは翼なのか羽なのか?
そして飛行機は翼だなヽ(゚∀。)ノ
羽根と根がつくのは抜け落ちてる状態のモノで
羽根ペンはもちろん羽子板やバドミントンに使う羽根及びシャトルもこれに相当するるる~
日本語って難しいね( *゚Д゚)つ[酒]

【大天使】と【天使】では【大天使】の方が階級が上だが
そもそも階級(ヒエラルキー)なる語が初めて使われたのは
1c頃のギリシア人ディオニシウス・アレオパギタの著書『天上位階論』においてであった

この『天上位階論』によると天使は上級・中級・下級の3層に分かれてて
各々更に3隊に分かれてるので全9階級で構成されてるらしい
その中で【大天使】は上から8階級目なので
ガブリエル、ミカエル、ラファエルって実は下っ端?!
それなのにミカエルが総ての天使の総帥てのは辻褄が合わナイ気がするのだがw
ちなみに【大天使】の下の階級(つまり1番下っ端)は【天使】だ

後世になって『天上位階論』は偽書疑惑に曝されたが
にも関わらず「位階論」自体は325年のニケヤの宗教会議でキリスト教の教義として正式に取り入れられて
以降現代まで天使学(アンゲロロギア)において「位階論」が正しい認識としてまかり通ってるるる~
元より天使の階級に信憑性などナイのだがねヽ(゚∀。)ノ

だいたいにおいて天使は科学の法則に従ってナイモノなのでその姿形は人間の概念の便宜上でしかナイ
より人間に近い下級の【大天使】や【天使】には人間に似た姿形が割り振られたのだろう
美術の中で天使らしい姿となれば100%どちらかだ

逆に上級天使は人間の想像を絶する様相をしてる
顔だけで身体がなくて顔から直に翼が生えてたりするのだ

このラファエロの『エゼキエルの幻視』は

正面に人間の顔
右に獅子の顔
左に牛の顔
後ろには鷲の顔で
翼が4枚生えてる

との聖書の記述に基づいてるのだが複雑怪奇な姿は天使よりは怪物。(´д`;)ギャボ
ラファエロは天才的手腕で美的にまとめてるが
これで実際に人間の前に姿を現されたら妖怪だと勘違いするに違いナイ。(゚д゚lll)ギャボ
だがしかし上級の【智天使】だったりして・・・((((; ゜Д゜))) ガクガクブルブル

そんなだから実力者のミカエルが天使の総帥として
肩書きだけの上級天使をも従えてるのは尤もな気もしてきたりしてw

ウルビーノのヴィーナス





このティツィアーノに描かれたヴィーナスは
顔立ちが気に入ってる

身体のラインはもう少し絞られてるのが好みだが
これだけの顔なら身体は別に文句も言うまい

肌の質感が実際はどうなのか
そこのトコロを生で見たかったので行ったのだが
見る前から出来栄えの良さは確信してたので
この作品だけで十分満足できると思って
他には何も期待せず・・・
てかそもそも何が展示されてるのか
全く気にも留めずに入場してたりして・・・ヾ(・_・;)ぉぃぉぃ

入ってみて気付いたが
要するにヴィーナス展だったようだ
しかも古代ギリシアの壺絵から展示されてるではナイか!

それにしてもヴィーナスとキューピッドは英語読みで
他はローマ神話に倣ってたりと煩雑で
気になって後から調べてみたら
フィレンツェ当局がバックアップしてて
ウフィツィ美術館の作品を展示してるくらいだった

となると史料はイタリア語できてたはずだが
主要な展示物であるヴィーナスとキューピッドだけは
汎用として英語読みにしたのだろうか?
しかしそれなら総て英語読みの方がわかりやすかったのでは?

肝心のヴィーナスの夫である鍛冶の神が
「ウルカヌス」だったワケだが
「ヘパイストス」の方が日本人には浸透してるのでは???

尤もゼウス(希)=ユピテル(羅)=ジュピター(英)さえ
日本人にどれくらい通用してるのか・・・。(´д`;)ギャボ

それはさておき
以下はギリシア語読みで統一するるる~ヽ(゚∀。)ノ

アプロディテ(ヴィーナス)自身には殆ど想い入れはナイが
関連する想い入れの深い人物(神)は多い

夫である鍛冶の神ヘパイストス
不倫相手の軍神マルス
息子(?)のエロス
片恋の相手の美少年アドニス
世界一の美青年パオン
「パリスの審判」のパリス

特別展示コーナーには
これらの作品数がそれなりに集めてあったのだが
ヲタからすると量ではなく質なのだよ・・・バタリ ゙〓■●゙

クラーナハの「パリスの審判」は駄作ではナイが
葡萄の房の巻き毛の美少年であるはずのパリスが
その辺のオサーンみたいに描かれてて萎えるし
パオンも1点あったが世界一の美青年には見えナイのだよ!

そしてこれはいつもゲンナリするのだが
アプロディテとエロスが描かれてる絵画は
絶対エロスがプットタイプ(幼児体型)なのだな(-_-;)
期待した自分が悪かった・・・(な、何を?!)

プット天使は当時(ルネッサンス期)の流行だったようだね
ギリシア神話ではエロスは原初の神に入ってて
アプロディテとの親子関係は示唆されてなかったのだが
ローマ神話においてはアモルもしくはクピドと呼称が変わり
ウェヌス(アプロディテ)の息子とされてるのだ

しかしプシュケとの恋愛物語もあるのだから
プットタイプはやめれ(苦笑)

挙句↓こんな時代考証無視のパリスも・・・Σ(゚д゚lll)ガーン

これは酷過ぎて笑えたんでポストカード買っちまったがねw