ヒュアキントスとアイアス、オウィディウスとブルフィンチ

美少年が死ぬと花や星になるのが常だが
無骨な武人が死んで美少年と同じ花になるコトもあるとは。(゚д゚lll)ギャボ

アポロンに愛でられた美少年ヒュアキントスも
巨漢でボンクラで美しさの欠片もナイトロイ戦争の勇士アイアスも
実は同じヒアシンスの花になったらしい?!

(前略)また、いつか、名にし負う豪勇のアイアスが、やはりこの花に身を変じ、同じその花びらに、彼の名前が読みとれるだろう

これはオウィディウスの『変身物語』の中で
アポロンがヒュアキントスの死を悼む台詞の一部だが
予言の能力を持つアポロンがヒアシンスとなってしまったヒュアキントスを前に
後にアイアスも同じ花になるだろう、と言及してるるる~

ムキ~p(-_-+)q

初めて読んだ時には耽美主義者として
美醜を一緒くたにしてしまったオウィディウスの美的感覚に憤慨したね

愚鈍な大男が空威張りしてる醜悪さは何にも増して醜いありさまだが
トロイ戦争においてはその最たる人物がこの大アイアス(※)だ
頭に血がのぼるのは早いが頭の血の巡りは遅いタイプで
悪意はナイのだろうが大男にありがちな乱暴者と見做されてて
嫌われ者でもなかったろうが恐らく煙たがられてた向きはあったかと思われ
アイアスとゆー名の武将がもう1人いるためにその体位から大アイアスと称されてた

自分は悪辣で薄情なオデュッセウスも虫が好かナイが
それでも亡きアキレウスの武具の取り合いでオデュッセウスが勝って
アイアスざまぁwww、くらいに思えてたのだから
いかにアイアスが生理的に好かナイってか無意識の嫌悪感があったか・・・

このアキレウスの武具の取り合い~アイアスの自殺までは
オウィディウスの『変身物語』にはなんと26ページにも渡って描かれてるのだが
アキレウスの死後なのでホメロスの『イリアス』にはナイ場面だし
他のギリシア神話の挿話集には詳しく載ってナイ。(゚д゚lll)ギャボ

メタモルフォーシス ギリシア変身物語集 (講談社文芸文庫)
ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)
ギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫)

特に【アイアスのヒアシンスへの転身】はオウィディウスのオリジナルなのか
近代に至ってトマス・ブルフィンチが『ギリシア・ローマ神話』で取り入れてるのみだ
但しオウィディウスがオデュッセウスの主張(言い訳)に16ページも費やし
アイアスの自身の武勲とオデュッセウスの非についての演説にさえ8ページ使ってるのに対して
ブルフィンチはアイアスとオデュッセウスの台詞は総てカットしてるがね
それでもブルフィンチはヒュアキントスの死後のアポロンの長台詞は
オウィディウスをそっくりそのまま引用してるので
このアポロンの予言に辻褄を合わせて仕方なく(?)取り入れたのかヽ(゚∀。)ノ

またブルフィンチはその注釈に
その花がLarkspur(ひえんそう)の一種であり
学名がDelphinium Ajacis(デルフィーニウム・アイアーキス)だとしてて
つまり、ヒュアキントス≒ヒアシンス、アイアス≒アイアーキス
とゆー類似性も指摘してる
尤も学名の「アイアーキス」は近代になってから
むしろアイアスが転身した花を想い起こした学者(リンネか?)の方が
オウィディウスに倣って付けたのだろうから何の信憑性もナイがw

まあ今と違ってググれなかったのだから
ブルフィンチが該当する花を探し当てるのは大変な作業だったろう。(´д`;)ギャボ

Larkspurでググってみるとなるほどヒアシンスぽい花だね

Delphinium Ajacisでググってみるといかにもってカンジの鮮紅色のがあった

アイアスの自殺に焦点を当てたソポクレスの悲劇『アイアス』では
やはり【アイアスのヒアシンスへの転身】はナイのだが
その名に悲しい際に発する「AI:アイ」の音があるコトをアイアス自らが嘆いてる場面ならある

わしの名がこの不幸と、これほどぴったりとその音を合わすことになろうとは、(後略)

ヒアシンスのどの辺りが「AI」なのかは謎だが(-_-;)???

ところでアイアスの死を嘆き悲しむアイアスの妻テクメッサについては
オウィディウスにもブルフィンチにも全く記述はなく
ソポクレスの悲劇『アイアス』を読むまで知らなかったが
そんなだから既にこの悲劇が大アイアスの方だと知った時には驚愕した!
アイアスの自殺って全然悲劇的には思えなかったからね!!
アリストパネスなら喜劇になるかも、なんて意地悪な見方さえしてたのだ(゚*゚;)

しかし『テクメッサの嘆き』とゆー音楽によって導かれ
アイアスについて色々と読み返してみたら改めて可哀想に思えてきて
特にオウィディウスの『変身物語』は180度見解が変わった

ただでさえ血の巡りの悪そうなアイアスだから
狡猾なオデュッセウスと言い争って勝てるワケもナイと思うのだが
アイアスは確かに力は強かったのは間違いナイし
それをギリシア勢の中で認められてるコトが彼の誇りだっただろうし
認めてくれてるはずの仲間を信じてた

だからアイアスはあえて武力に訴えずに権利を主張したのだろうが
むしろオデュッセウスは弁論術なら絶対に勝てると思って挑んだのだろう
実際アイアスのオデュッセウス批判は尤もだし
オデュッセウスが非を覆すのに述べてるコトは雄弁とゆーよりは詭弁でしかなく
よくぞそこまで恥も外聞もなく開き直れると感心するくらいだが
そんなオデュッセウスの主張が通ってしまうのは
なんせアガメムノンが総大将なくらいだから
ギリシア勢の知的レベルがいかに低いかってものだ(;つД`)

しかしそれでいくらオデュッセウスに騙されてたからって
同胞のアイアスに対してギリシア勢の情け容赦がまるでナイのは酷いし
孤立無援となったアイアスがギリシア勢に抱いた復讐心と
その復讐を果たせなかった末に自殺に至った無念さは確かに悲劇だ、泣けてきた。・゚・(ノД`)・゚・。