紅百合

上野の東京都美術館のウフィツィ美術館展
ボッティチェリの『パラスとケンタウロス』を観に行ったが
他にも数点めぼしいモノがあったので
それらについても書き留めておく

が、その前に
メインの『パラスとケンタウロス』について
昨日書いた記事[パラスとケンタウロス]の追記を

図録を買ってきて解説を読んでたら
目録では以下のようなタイトルもつけられてたそうだ

古い順にまず『カミラとサテュロス』とな(゚ ゚;)???
カミラって名とこの武装からしたら
ウェルギリウスの『アエネイス』に出てくるアマゾネスか?!
いや、でもこれ、サテュロスは違うね
下半身が馬ではなくってよ。(´д`;)ギャボ

アエネーイス

次の『二人の人物像の大きな絵画』って・・・ヾ(・_・;)ぉぃぉぃ
これまた随分とテキトーなw
ケンタウロスがどうしたら人物に見えたんだwww

そして『ミネルヴァとケンタウロス』となるワケだが
こうしてこれまでの変遷を考慮したればこそ
この女がパラス・アテネかどうかは疑わしくなった
とはいえ、それなら誰なのかはいくら考えてもわからん。(゚д゚lll)ギャボ

ボッティチェリよ、魅力的な謎をありがとう!

そしてボッティチェリのもう1つの秀作があった

『聖母子、洗礼者聖ヨハネ、大天使ミカエルとガブリエル』だ
これはもう見た瞬間に誰がどれだがすぐわかるように
アトリビュート(特定の持ち物)を携えてる

剣を持つミカエルと十字の杖を持つヨハネ
そして百合の花を持つガブリエル

それにしてもこの絵(トンド)は初めて見た!
ググっても引っかからなかったからネット上にはナイ?
としたら、もしかしてこれが1番の収穫だったんだろうか?!
このガブリエル、表情もレアだし、なんと美しい・・・ホゥ(*-∀-)

次のもボッティチェリで聖母子像だが
この天使がカメラ目線(?)でカワ゚+.(・∀・)゚+.゚イイ
巻き毛も愛らしくて好みのタイプの美少年だなあ♪

ここまでの3枚のボッティチェリのポストカードがあったら
それらを買って帰る、か、なかったら図録を買おう、と決意した

で、結論から言えば、図録購入した
さすがにケンタウロスのはグッズも色々あったけど
残念ながらトンドの聖母子像のポストカードはなかったし
3枚目の聖母子像はポストカードがあったものの
聖母子像がクローズアップされてて美少年天使がちょん切れてたりで
納得行かなくてそれは買わず・・・

他にはこのラファエルとトビトも
足元の子犬が可愛かったんで気に入った

これは人物でなくて
フィレンツェの紅百合の紋章が目に留まった

そう、フィレンツェの百合の紋章は紅いはずなのに
売ってたトートバッグは白百合だったりしてヽ(゚∀。)ノ

まあ買ったけどね~

ビブロス(イシスとオシリス)

赤地に黒でセンシティヴで流麗なライン
ビアズリーかハリー・クラークのようなイラスト
中心には黒地で金枠に金の文字

七つの愛の物語―「イシスとオシリス」から「トリスタンとイゾルデ」まで

そんな表紙の美しい装丁の本『七つの愛の物語』には
ヨーロッパやオリエントの原初の愛の物語が
タイトル通りに7つ収録されてる

エジプト神話★イシスとオシリス
シュメール(メソポタミア)神話★イナンナとドゥムジ
インド神話★シヴァとサティー
ヘブライ人(イスラエル人、ユダヤ人)の伝承★雅歌
ギリシア神話・ラテン文学★プシュケーとエロース
アラビア人(ペルシア人、セム族)の伝承★ライラーとマジュヌーン
ロマンス(中世ヨーロッパの騎士物語)★トリスタンとイゾルデ

これらの中で「トリスタンとイゾルデ」は何冊も持ってるほどのヲタで
それでも飽き足らずに「トリスタンとイゾルデ」をググってて
この『七つの愛の物語』に出会った(のは2004年)

ギリシア神話もラテン文学もヲタなので
「プシュケーとエロース(アモルとプシュケ)」も
アプレイウスの『黄金の驢馬』の挿話としてよく知った話だった

その『黄金の驢馬』の最後に登場するのがイシスとオシリスで
エジプト神話由来の夫婦(兄妹)神だとは知ってたが
なんせプルタルコスの論文『イシスとオシリスについて』でしか読んでなくて
この神話の内容はどうも朧気だったのだ

では、これから神話を物語りますが、できるだけ手短に、まったく無用の余計な部分は省略することにしましょう。

そう前置きしつつ『イシスとオシリスについて』でも一応あらすじを紹介してはいるが
むしろ逆に無駄にプルタルコスお得意の薀蓄を織り交ぜてくるので
話が横道に逸れまくるわ、1つの単語を深く掘り下げ過ぎるわ
輪郭がさっぱり掴めんてヽ(゚∀。)ノ

しかもそうしてストーリーもはっきりわからナイワリには
違和感を感じて引っかかってしまう箇所があって
例えば、イシスの父親がヘルメスだとか。(´д`;)ギャボ
セト=テュポンとか、オシリス=ディオニュソスとか。(゚д゚lll)ギャボ
まあこういった系譜の異説や異民族間でのすり替えは神話ではよくあるコトだがw

但し、プルタルコスは古代ローマの神官(※)だったが
古代ギリシアの哲学者のような自然哲学に対する考察力があり
神と称される信奉の根源的存在を一種の象徴と捉えてる部分があり
各民族の信仰の由来が近似だった神同士を結びつけてるので説得力はあるるる~
アポロンを祀るデルポイ神殿に仕えてた

それでもどうにも納得が行かナイのは
オシリスの棺が流れ着いたのがビブロスだったってコトで
ウェルギリウスの『アエネーイス』にしてもだが
古代ローマ人が信じてるフェニキア人の各都市の成立年代(※)ってのが
史実より明らかに古過ぎるのだよな(-_-;)
ヘロドトスの『歴史』がフェニキア人についての記述から始まってるのが誤解の元かと推測

エジプト創世神話の時代にビブロスが既に都市化してて
トロイ戦争の頃にはカルタゴが建国されてたなんて・・・バタリ ゙〓■●゙

いや、神話の中で1,000年のズレがあるのは気にならナイが
人類史としたら100年もズレてたら嘘になってしまう
神は1,000年生きるだろうが人は100年も歳をとらずにはいられナイのだ

だからフェニキア人の史実を誤って神話に取り入れたために
神話としても不確実性を露呈してしまってるのがなんとも惜しい気がするのだ

ちなみにゲルハルト・ヘルムの『フェニキア人』によれば
確かにビブロスの遺跡は他のレバノン海岸沿いの都市と比して最も古く
最古で紀元前4,500年頃の村落跡が発見されてるが
イシスが訪ねたような王宮となると村落などではなく
もっと都市化された紀元前2,900年頃より以降と想定されるので
エジプト第1王朝(紀元前3,100年頃)よりも新しい

そもそも同じく『フェニキア人』によればビブロスの呼称は

ブブロスあるいはビュブロスは単に、強大なフェニキアの共同体の名というだけでなく、また、パピルス、すなわち紙の原料を表わすギリシア語でもあったのだ。のちに、それからビブリオン、すなわち本という表現ができ、最後にルナンが集中的に研究していた聖書(ビブル)になった。

パピルスあってこその名称でそう呼んだのも古代ギリシア人てコトは
少なくとも紀元前2,000年以降と更に新しく想定せねばなるまいて(゚*゚;)

対するイシスとオシリスの年代の古さだが
まず混沌からアトゥム=ラーが生じて
シュー(空気もしくは大気)とテフヌト(蒸気もしくは湿気)を産み
シューとテフヌトがゲブ(大地)とヌト(天空)を
ゲブとヌトがイシスとオシリスを産んだとされてるのだから
実はエジプト第1王朝とかのレベルではナイのだ

それはそれとしてイシスとオシリスが1,000年以上とか生きてて
それより前の世代は億単位の年数を生きてるとすると
科学史とはある意味で辻褄が合ってるのだが?!

ゲブとヌトが生まれたのはその名の通りに大地と天空ができた時で
シューとテフヌトが生まれたのは地球ができた45億年前で
アトゥム=ラーが生まれたのはビッグ・バンとか?!

古代エジプト人が地球外生物かと疑われる所以はこの創世神話かΣ(゚д゚lll)ガーン

ダンテとウェルギリウス

ダンテの『神曲』でウェルギリウスが案内役なのは
『神曲』を書き始める段階で候補者の中から選んだのではなく
最初から決まってたに違いナイ、と思うのは
若い頃に書いた『新生』第25章において自身の詩作の意義が語られてるが
ここで例として既にウェルギリウスの名が筆頭に挙げられてるからだ

「アエネーイス」ローマ建国神話

ウェルギリウスといえば『牧歌』『農耕詩』『アエネーイス』だ
参考までに『牧歌』と『農耕詩』は西洋古典叢書に1冊に収録されてて
『アエネーイス』は今では数種類の訳で出てるが
韻文訳の語調の小気味よさや解説の充実度、そして値段の安さとで
オススメは岩波文庫の泉井久之助訳だ

『アエネーイス』はトロイ戦争において若者アエネーアース(※)が
トロイ王家(分家)の唯一の生き残りとして
漂流の末にイタリアに辿り着いて
王となってその子孫がローマを建国し
更にその血筋のカエサル(シーザー)やアウグストゥスが帝政ローマを築いた
とゆーギリシア神話を引き継いだローマ建国の物語でフィクションだ
読み方はWikiに準じた

古代ギリシアの先達に倣って、先祖に神のいる血筋を
悪く言えば捏造した、よく言えば辻褄が合うように編纂したのだが
ホメロスの『イリアス』に出てきたアエネーアースは
カエサルが自らをアエネーアースの末裔と主張する以前に
元々ラティウムで伝承されてたローマ建国伝説と融合させたぽい

編纂されたのはアウグストゥスの時代で
このウェルギリウスの『アエネーイス』以外にも
オウィディウスの『変身物語』などがある

自分の好みとしては『変身物語』だし
他の著作もオウィディウスの方が読みやすいし面白いが
『アエネーイス』はラテン文学の最高峰として
必読の古典だ!!(と思ってるのは自分とダンテだけ?)

ウェルギリウスはダンテにとって神のような存在だったが
当のウェルギリウスにしてみれば、それはホメロスだったようで
ホメロスを超えられなかった、と思い込んでたのだろうか?
『アエネーイス』が完成したコトを自ら認めずに

死後に火中に投じるように

などと遺言してたりする(遺言が実行されなくて現存してるるる~)

ホメロスを意識してのコトなのかどうか
第7巻の戦いの火蓋が切って落とされるトコロで物語は分割できるが
前半は『オデュッセイア』の如き冒険(漂流)譚で
後半は『イリアス』の如き戦記だ

長さもホメロス級で1万行以上(全12巻)に及ぶが
それでいて甚だしくも第1巻から
アエネーアースが築いた王国や子孫がどうなったか
またその後どうやってローマが建国されて
それがカエサルやアウグストゥスに至るのかが
既に【予言】として出てくるのである。(´д`;)ギャボ

つまり最初に結末がわかってしまってから、残り11巻・・・バタリ ゙〓■●゙

しかもその結末には程遠く全く辿り着かず
敵の大将が死ぬ場面でいきなり終わってしまうので
【予言】されてた事象は【予言】のままに幕切れとなってる。(゚д゚lll)ギャボ

ネタバレとかに神経使って生きてる輩には想像を絶する構成だが
ホラティウスの『詩論』Ab ovo.(卵から始める)てのがあるが
それこそトロイ戦争ならまだしも
ローマ建国の話がレダの卵から始まってもw

トロイでのアエネーアースには子も生した妻がいたが死に別れ
最終的にはラウィーニアを娶ってその地の王となるが
その間に恋に落ちたのはカルタゴの女王ディドで
アエネーアースとディドの愛憎劇はある意味1番のクライマックスだが
このディドとのエピソードが『アエネーイス』の最初にあるのだ

そりゃあアエネーアースにはトロイ再興の目的があり
そのためにそれが適う相手(ラウィーニア)と結婚したワケで
自分にはどうも政治的野心を持ってる人間は胡散臭く感じてしまうが
ダンテは妄想の中では恋愛第一主義のようでいて
現実では政治的野心を持ってたから、案外その辺も共感できるのかな?

『神曲』の筋立ては
神話・伝説上の人物や怪物と歴史上の人物が冥界においてどうなってるか
ダンテが確認しつつ冥界を巡る、とゆーモノだが
それらの人物はダンテの信仰と政治理念によって裁かれてて
裏を返せば、ダンテの信仰と政治理念を表現するために引き合いに出されたのだが
裁いたダンテ自身も公的には罪人であるトコロがおもしろいヽ(゚∀。)ノ

聖人は自身の悪しき部分を
傍から見たらたいしたコトなくても嘆き悲しむモノだが
少し狂人めいたくらいの極悪人ともなると過去の悪事や罪状を
もれなく自慢したりするモノである

どちらの場合も善悪の切り分けがはっきりしてて迷いがナイから
自身に対する省察が良くできてるのだが
ダンテのような平均的善人でも野心によって中途半端な罪人になったってのは
なんとか自身を社会的に正当化しようとしてもがくからこそ
葛藤や苦悩が多いのだろうか。(´д`;)ギャボ

それで『神曲』の出だしでは暗闇の森で迷ってるのだが
だからガイドはアエネーアースではなくウェルギリウスなのか。(゚д゚lll)ギャボ

野心家アエネーアースを描ききった詩人のウェルギリウス・・・

ホメロスとラテン文学の2人の文豪

『アエネーイス』第1巻の巻末には
トロイからカルタゴまでの艱難辛苦の旅路を物語ってくれるよう
カルタゴの女王ディドがアエネーアースに頼む部分があり
続く第2巻からアエネーアースのトロイ戦争譚が始まると予期させるが
その通りで以下のような構成で話は進む

第2巻 トロイ陥落
第3巻 トロイからカルタゴまでの漂流

こうして2巻に渡って語られるアエネーアースの回想は
ホメロスの『イリアス』『オデュッセイア』の間隙を埋めるような内容だ

「トロイ陥落」のシーンは『イリアス』にはなく
続編の『オデュッセイア』でオデュッセウスの回想として語られるのだが
勝者であるギリシア方のオデュッセウスに対して
敗者であるトロイ側のアエネーアースでは
同じコトでも見方は180度違ってくるワケで
その辺を併せ読むとどちらもより一層深みを増してくる

これはウェルギリウスが意識的にリスペクトしてるのだろうが
焼き直し(オリジナルをコピーしてるだけ)ではなく
隙間埋め(オリジナルにはなかったがそうだっただろうと思わせる付け足し)なのが
ヲタ的に嬉しいしその才気に感服せずにはいられナイ(-人-;)

しかし天才はウェルギリウスだけではナイ
ほぼ同時代のオウィディウスの『変身物語』も
ギリシア・ローマ神話の総決算的な挿話集となってて
『アエネーイス』と同じように
巻末の方には「トロイ陥落」以降のアエネーアースからアウグストゥスの帝政ローマまであって
これがまたちょうど『アエネーイス』で飛ばされてる部分が詳述されてるるる~

スタイル的にも両者は好対照で
オウィディウスの『変身物語』が幻想文学的で
ウェルギリウス『アエネーイス』は歴史スペクタクルだ

また『イリアス』と『オデュッセイア』は
何世紀にも渡って多くの吟遊詩人たちに謳われてきてるので
その間に練られてきたモノを文献の形にした際にホメロス作だと冠したが
実際にはホメロスだけの手によらナイコトが明白で
それに比するのもなんだがウェルギリウスとオウィディウスが
夫々に大叙事詩を一生の内に完成させたのはむしろ凄いと思うのだ

ところで『アエネーイス』で敵の大将トゥルヌス打倒で話が途切れてるのは
それから先の話がそれまでに何回か【予言】の形で出てるので
結末は全く不明ではナイどころか
当時のローマ人にしてみれば『アエネーイス』以降の話はよく知った話で
ウェルギリウスにわざわざ詳述されるまでもなかった

それぞれ独立してたローマ建国神話が1つに繋がって
最終的に時の人アウグストゥスに及んでるコトが肝要だったのだが
最も重要なのはその前に”原初に”何があったかなのだ

ギリシア人のルーツはギリシア神話にあるが
ローマ人のルーツもこれに倣う、自らが蹂躙した民族に倣うのだが
このローマ人の素直なおおらかさが人として美しくて好きだw

そして今更ながらタイトル表記の問題に触れておくと
ここでは慣れ親しんだ岩波文庫に倣って「アエネーイス」と統一したが
愛用の『世界史用語集』にも「アエネイス」とあるし
近年になるに従って長音無視の傾向なので(※)
長音を無視した「アエネイス」の方が今では一般的だと思ってた
死語であるラテン語ではネイティヴはいナイのだし、ましてや日本語表記となっては正しいもへったくれもナイ
ギリシア語でも長音無視型が当たり前となり、今では【プラトーン】と言ったら哲学者でなく映画のタイトルだw

しかしながらググってみると予想外に「アエネーイス」の方が多かった?!

本来のラテン語表記ではAeneisでこれを発音する場合は
岩波文庫版の解説にあるように母音の長短の別がはっきりしてて
実際にラテン語に忠実なのは「アエネーイス」だ

同じ理屈で主人公の名であるAeneasも
岩波文庫版の「アエネーアース」が正しい発音に近いようだが
ググってみたら「アエネーアース」はやはり少数派で「アエネアス」が1番多かった

でも次点の「アイネイアス」が日本では主流ぽい
岩波文庫版のオウィディウスの『変身物語』もこれだ

「アエネーアース」と訳した泉井久之助は
長音を正確に近い形で付し韻律を崩さずに訳してるからで
「アイネイアス」と訳した中村善也は
散文訳にしたので時代に即した長音無視型でも構わナイワケだ

両者ともそうして訳してる、と先に断りを入れてるので
Aeneasの日本語読みは訳者の考え方の違いでしかナイ

だがしかし!
ラテン語系列の原語の表記を調べてみたら
フランス語、イタリア語、スペイン語で順にEnee、Enea、Eneasで
どれも〔アイ〕で始まるのには違和感があるるる~
なので「アエネーアース」に統一した

作者の名前もラテン語の綴りはVergiliiなので
そのままの綴りで読み方を自国風にする英語圏では「ヴァージル」となってしまうし
日本でもそれと似た傾向があるのでローマ字読みで「ヴェルギリウス」とされたり・・・
まあラテン語についてローマ字読みってのもおかしいがヽ(゚∀。)ノ
あるいは英語圏経由で「ヴァージル(バージル)」となってたり
ダンテは『新曲』で「ウィルジリオ」とか「ヴィルジリオ」とか呼んでるし
どうにもいかんせんちぐはぐだったが
近年はラテン語発音に忠実な「ウェルギリウス」が汎用となってるようだ

岩波文庫ではもちろん「ウェルギリウス」となってて
自分もこれで行こうと納得してるのだが「バージル」には思い入れがある

イブの息子たち (1) (白泉社文庫)

青池保子のマンガ『イブの息子たち』に出てくるのだ、バージルとゆー詩人が!
これは当然ながらウェルギリウスがモデルだ!!

『イブの息子たち』は小学生の時に大好きだったマンガで
アレクサンドロス大王からニジンスキーまで
史上に異彩を放つ傑出したキャラが総出演してるのだが皆どこか壊れてたw

その中で信長の小姓の美少年で名高い森蘭丸と眼力勝負してたのが
準主役だったこのバージルだった

パタリロ 85 (花とゆめCOMICS)

同じ頃やはり愛読してた『パタリロ!』にも
(ってか今でも全巻&番外編も蒐集してるくらいだが)
美少年をなぎ倒す眼力の持ち主バンコランが登場するのだが
バージルとバンコランで勝負して欲しいものだし
森蘭丸とマライヒの一騎打ちなんてのも゚+.(・∀・)゚+.゚イイね

美少年同士が絡む図は睦み合うより死闘の方が絵になるのだ・・・ホゥ(*-∀-)

ゼウス(ユピテル)の予言とアプロディテ(ウェヌス)の庇護

ウェルギリウスの『アエネーイス』の最初の方で
アエネーアースがアフリカ北岸(現チュニジア)に辿り着いた頃
息子の難儀に心を痛めてたアプロディテ(ウェヌス)は
父なるゼウス(ユピテル)にそれを訴えると
ゼウスはアエネーアースとその子々孫々に至る未来を語り
ヘルメス(メルクリウス)を遣いにやった

ヘルメスはカルタゴの女王ディドに
トロイ王家のアエネーアース一行を歓待するように告げるが
その一方ではアプロディテも息子のエロス(クピド)を遣わして
ディドに愛の矢を射てアエネーアースを愛するように仕向けたのだった

ギリシア神話ではアプロディテは泡から生まれたとされてるが
ローマ神話では母親は諸説あるようだが、なぜかゼウスの娘となってて
よってゼウスにとってアエネーアースは孫にあたるのでカワ゚+.(・∀・)゚+.゚イイのもあるだろうし
実母であるアプロディテが息子を庇護するのに理由など要らナイだろう

しかしゼウスの妻のヘラからすれば
アプロディテはゼウスが他の女に産ませた子なので本妻が妾の子を憎く思うほどには憎いだろうし
ましてや【パリスの審判】において美貌で「負け」の判定をされてたら
アプロディテに対してよく思いようがあるまい
その息子ともなればアエネーアース然りで
更に怨恨のあったトロイ王家が滅亡したコトで少しは気が晴れたヘラにとって
アエネーアースがトロイ再興をしようとしてるのは許し難かったに違いナイ

それでもゼウスの預言通りに
アエネーアースの子々孫々がトロイ再興、てか、ローマを建国するるる~

とはいえ、最終的には実在してたカエサルやアウグストゥスに至るが
アエネーアースもその後の子々孫々の物語も基本的にはフィクションなのだ

古代ギリシアではトロイ戦争の物語は人口に膾炙してたが
アエネーアースのその後は誰も知らず
英雄に祀り上げられたのはローマがギリシアを蹂躙した後のコトだ
蹂躙されつつも【教養】を誇ってたギリシアに認められるために
ローマの支配階級の家系がギリシアの神の系譜由来であると論証させた試みが
アエネーアースに始まる『アエネーイス』なのだ!

ローマ領において既に独立して存在してた神話や伝承を
史実との辻褄合わせのために少々手を加えてからパズルのように繋ぎ合わせてて
その調整の部分がウェルギリウスの創作ってワケで
だから本来のギリシア神話とは食い違ってる点が多かったりするのだ

アエネーアースはローマ人にとって実に都合の゚+.(・∀・)゚+.゚イイ人物で
ギリシア人の血統ではナイがギリシアの神の血統であり
息子の名がユールス(ユリウス)であった(※)コトが
その名を持つ一族にはまさに好都合だった!!
アエネーアースの息子はアスカニウスで、アスカニウスの息子がユールスだが
ウェルギリウスはアスカニウスの別称がユールスであるとした

現代日本人からしたらバカバカしい気もするけど
『古事記』由来の天皇家を未だ君臨させてるのだからそれもありか。(´д`;)ギャボ

クラウス:歌劇「カルタゴのイーニアス」より管弦楽作品集

ところで『アエネーイス』の中で1番のクライマックスと言えば
カルタゴの女王ディドが絶望して自殺してしまうシーンで異論反論はナイと思われるが
ディドにアエネーアースを歓待するように命じたのはゼウスだし
愛し合うように仕向けたのはアプロディテだ

アエネーアースが最終的にはイタリアへ旅立つ宿命なので
その準備を整えるためにもディドに力になってもらおうとゼウスが取り図ったのはわかる
でもディドを捨て置くコトになるアエネーアースに対して
ディドが恋するように仕向けるのは惨い!
愛と美の女神アプロディテがやるコトとは思えナイ!!

どうもアプロディテの庇護の仕方は
愛する美しい息子アエネーアースしか見えておらず
ディドはその犠牲者で「犬死に」と言っても過言ではナイだろう

ところでカルタゴはポエニ(フェニキア)人の「新しい町(※)」で
建国したのは女王のディドだが
ディドは元はテュロス(レバノン海岸にあるポエニ人の町)の先王の妻であり
その先王を殺害して王に収まってるのがディドの兄だったりして
夫殺しの悪辣な兄に愛想が尽きたので故郷を去り
夫の意志を継いで国を興したのだ
カルタゴは正しくはカルターゴーで「新しい町」を意味する

恋をした相手に捨てられたからって自殺するような
そんなに脆い女性にはとても思えナイのだが
トマス・ハーディの見解は正しいのかもしれナイな

強気の女がその強気を投げ棄ててしまふと、投げ棄てるべき強さなどは全く持たない弱気の女よりもっと弱くなるものである。

ちなみにテュロスはポセイドン(ネプチューン)の息子アゲノールを祖とするが
『アエネーイス』の脚注にポセイドンはアプロディテの夫とされてるるる~

って、ちょっと待て!

アプロディテがポセイドンの妻とな。(゚д゚lll)ギャボ
そんな設定は『アエネーイス』以外では覚えがナイってばよ!!
本来ならアプロディテは鍛冶の神ヘパイストス(ウルカヌス)の妻で
軍神アレス(マルス)が不倫相手で
アンキセスは浮気相手の1人に違いナイのだが
ポ、ポセイドン・・・???

いずれにせよ、アプロディテはローマ神話に取り込まれて
ギリシア神話以上に恋多き女になったのは間違いナイ
もしかしてこの浮気癖がゼウスにそっくりだからって娘とされたのか?!

ヘラ(ユノー)の嫉妬

ウェルギリウスの『アエネーイス』の構成は
結末を冒頭で先に告げておいて全12巻をとくと読んでもらおう
って自らネタバレする大胆不敵さだが
当時(アウグストゥスの頃)『アエネーイス』を読む人は
アエネーアースがローマ建国の祖であると知ってて読んでたのだから
ある意味ネタバレの心配のしようもなかったかもだ

第1巻の巻頭でも

わたしは歌う、戦いと、そしてひとりの英雄を――。
神の定める宿命の、ままにトロイアの岸の辺を、
まずは逃れてイタリアの、ラーウィーニウムの海の辺に、
辿りついた英雄を――。

と謳われて始まるので
そのすぐ後に「トロイを出航したアエネーアース一行が
ユノー、つまりヘラの妨害で暴風雨に遭って
新トロイア(現イタリア)を目指してから7年を費やしてた」とあっても
ヘラの妨害なんのそのでイタリアに辿り着いてしまうとわかるw

ただちとわかりづらいのが
なぜヘラがアエネーアースを妨害するのかだ

1つは【パリスの審判】で
トロイの王子パリスがヘラ、アプロディテ、アテナの3柱の女神から
最も美しい女神を結果的にアプロディテと判定した

そもそも判定役はヘラの夫のゼウスだったのだが
誰を選んでも他の2柱からの怨恨は免れナイだろうと臆したのか
この役目をパリスに振ったのだ

まだパリスがイデ山で羊飼いをしてた時
金の林檎を持ったヘルメスと上記3柱の女神が現れて
最も美しい女神に金の林檎を渡すように促され
女神はそれぞれに選ばれた際の賄賂をパリスに約束して
なんとか選んでもらおうとする(女神のワリになんつ~姑息なw)

これでアプロディテが金の林檎を受け取ったので
約束の賄賂である世界一の美女ヘレネをパリスに賜ったワケだ
(おかげでトロイ戦争が勃発してしまうのだがね)

ヘラとしては最高神ゼウスの妻であるプライドからも
アプロディテに負けたのがよほど悔しかったのだろうが
ヘラはこの恨みや怒りを判定したパリスにぶつけ
このコトが尾をひいて始まったトロイ戦争でもヘラはギリシア勢を応援してた
てか、ヘラはパリスをトロイもろとも叩き潰したかったに違いナイ。(´д`;)ギャボ

なぜならヘラは以前からトロイ王家に怨恨があったからだ
これがゼウスによる【ガニュメデスの誘拐】事件で
本来なら浮気性の夫のゼウスに向けるべき怒りだと思うのだが
女ってモノはヘラに限らず、どうも相手の女を呪ってしまう傾向があるようで
女神とはいえ、ヘラももれなくそんな女だった。(゚д゚lll)ギャボ

ちなみに相手はトロイのガニュメデス王子で男なのだがなヽ(゚∀。)ノ

トロイ戦争 (洋販ラダーシリーズ)

ところでガニュメデスとパリスとアエネーアースは揃いも揃って超絶美形らしいが
稀有な美形を続々排出しまくるトロイ王家についてちょっと解説

トロイ王家の祖はトロス王で
このトロスの祖父がダルダノスで
ダルダノスはゼウスがアトラスの娘エレクトラに産ませた子だ
って、またゼウスのお手つきかょ(;つД`)

だいたいアトラスとオケアノスの間に生まれた7人の娘は
ゼウスがお手つきしまくりで
エレクトラが産んだのがダルダノスだが
ターユゲテーが産んだのがラケダイモンで
マイアが産んだのがヘルメスだ

パリスの生まれたトロイ王家の祖であるトロスの祖父ダルダノス
ヘレネの生まれたスパルタ王家の祖であるラケダイモン
そして【パリスの審判】で金の林檎をパリスに授けたヘルメス
皆アトラスとオケアノスの7人の娘から産まれてたのだ、しかも父親はゼウス(※)・・・バタリ ゙〓■●゙
残りの娘はゼウスの兄弟であるポセイドンのお手つきだったりする

自分も今まで気づかなんだが
アトラスとオケアノスの7人の娘は
トロイ戦争にとっては宿命的な存在だったのだな?!

トロイ王家に話を戻すと
トロスの一番上の息子はイーロスでこの名がイリオンの地名になり
二番目のアッサラコスが兄イーロスの娘と結婚して生まれたのが
アンキセス・・・後のアエネーアースの父なのだ!

そして一番下がガニュメデス王子で
結婚する前にゼウスに浚われて、神々の宴で給仕をさせられて、ヘラには睨まれて
挙句に星(水瓶座)になった美少年だ!!

アンキセスも美の女神アプロディテの寵を得るほどの美形で
間に生まれたアエネーアースも美麗なのは当然か?!

プリアモス(別名ポダルケース)はイーロスの息子で
アンキセスからすると複雑な系統にあたり
母親の腹違いの兄で父親の兄の息子って、え~と(-_-;)???

更にメンドウなのはアンキセスの息子のアエネーアースが
プリアモスの娘(ヘカベが産んだクレウーサ)を妻にしてる点だが
アンキセスからするとプリアモスは息子の嫁の父親ってコトになって
これがある意味1番わかりやすいか

以上の系譜はアポロドーロスの『ギリシア神話』を参考にしたが
ギリシア神話の家系図を調べる時には最も役に立つ。・゚・(ノД`)・゚・。

フェニキア人

海からやってくる商業民族を
ギリシア人はフェニキア人と呼び、ローマ人はポエニ人と呼んだが
どちらも「紫の、もしくは紅の人」の意で
その由来は彼らが得意とする貝染めの紅紫色だと
ゲルハルト・ヘルムの著書『フェニキア人―古代海洋民族の謎』を読んで知った

ナショナル ジオグラフィック [DVDブック] ビジュアル保存版 古代ギリシャ フェニキア 地中海に生まれた文明の興亡 (ナショナルジオグラフィック DVD BOOK)

ユーフラテス河上流域で遊牧生活を送ってたヘブライ人は
カナンの地(現パレスチナ)に暮らす彼らをカナン人と呼んだが
ヘブライ人は神にカナンの地を与えられたので
先住のカナン人を追い出して、カナンの地を侵略した。(´д`;)ギャボ

追われたカナン人は移住を余儀なくされ
地中海東岸(現レバノン海岸)に開港都市を築き
海上交易によって栄え
紀元前12~11世紀頃にはシドンやティルスが最も繁栄した

但し、ビブロスだけはエジプト神話にも登場してるので
古くから都市国家があったのかもしれナイし
逆にアフリカ大陸の北岸(現チュニジア)にカルタゴを興したのは
紀元前9世紀よりは後(※)だと考えられてるるる~
便宜上、カルタゴの建国については紀元前814年とされてるが裏付けはナイ

とりあえずウェルギリウスの『アエネーイス』では
カルタゴの初代女王だったディドが
トロイ王家の唯一人の生存者アエネーアースを歓待するが
これはおかしな話なのだ
なんせディドは紀元前9世紀より後の人だが
トロイ戦争が起きたのは紀元前12世紀頃なのだからヽ(゚∀。)ノ

ウェルギリウスがなぜ2人を同時代人に設定したのかは
フェニキア人の都市ビブロスがエジプト神話に出てくるコトから
古代ギリシアの歴史家がカルタゴも同じくらい古いと考えてたようで
そんな資料を用いたであろうウェルギリウスには
史実として信じられてたからなのだ!

そもそも『アエネーイス』は
『イリアス』や『オデュッセイア』以上に明らかなフィクションで
言い方は悪いがローマ帝国が捏造した歴史書なのだ。(゚д゚lll)ギャボ

これはオウィディウスの『変身物語』然りで
どちらも文学作品として(の価値はまた別問題で)秀逸である事実は否めナイが
史実ではなく、神話と伝承をベースにした再話なのだ!!
だからウェルギリウスがこれを焼却するよう遺言したのは
政治に利用された感が拭いきれなかったからなのではと思われ

フェニキア人はアルファベット(の基)を発明したが
自らの民族の歴史を書きとめたりはしなかったので
史実としては古代ギリシアの文献に断片的に残ってる記述とか
他民族の手によるモノばかりであるるる~

例えば、紀元前3世紀のアレクサンドロス大王のティルス攻めは
東征に随行した書記官によって記された

それにしても『フェニキア人』はこのティルス攻めの詳細から始まってて
町を破壊しつくして、2,000人を磔にした、とあり
東征中にアレクサンドロスが最も冷酷無比な処置をしたのが
このティルスに対してなのは明白だ・・・バタリ ゙〓■●゙

先住の地を追われたり、開港都市を築けば惨滅されたり
酷い扱いを受け過ぎな民族で憐憫の情が湧いてしまうのもあるし
商売のセンスもあるがクリエイティヴな民族でもあり
謎の部分が多いのもまた魅力的なのだが
だから英雄としてハンニバルの名が挙がるのは嬉しく思う

ハンニバルはローマ軍とのポエニ戦争でのカルタゴの将軍で
カルタゴ・ノヴァ(現スペインに位置する)から
まさかのアルプス越えを行ってローマ軍に圧勝した際の指揮官だ!

ポエニ戦争ではカルタゴが新興勢力のローマと
シケリア(現シチリア島)を奪い合って3度に渡って戦い(※)
スキピオによって最終的にはローマが勝利を収めたが
カンネー(カンナエ)の戦いでハンニバルの得た勝利には胸がすく!!
長くなるので今回は端折るが、この戦争でローマがシケリアを獲得した意義は大きかった

ローマ占領下となったカルタゴはローマ帝国の滅亡後も
西ローマ帝国の統治下に置かれたり
ヴァンダル族が侵入して王国を建国したり
東ローマ帝国の属州になったり
イスラム勢力に次々と侵略されてったり
十字軍に攻め込まれたり
オスマン・トルコ領になったり
フランス保護領とされたり
1956年になってやっとチュニジア(※)として独立した
チュニジアの呼称はイスラム勢力の侵略以降

そうしてフェニキア人はエジプト神話から現代に至るまで
激動の時代を耐え忍びながらもしぶとく繋いできた